12/25 塩竈市の漁業と水産加工業への支援を求めて政府交渉

昨年の12月25日、私、県議と共産党の塩釜市議団と一緒に、紙智子参議院議員にも同席いただいて、水産庁、中小企業庁、財務省と交渉を行いました。要望書は、昨年8月18日に行った「塩釜の水産業を考えるつどい」で出された要望や課題等を踏まえて作成しました。要望書に対する回答を報告します。

【水産庁】

1.水産庁の調査では、売上が震災前より8割以上回復した水産加工業者は未だ54%にとどまっている。生鮮流通及び商品開発等の専門家の助言導入や、被災企業・団体による消費者の商品ニーズ把握支援、行政による被災地復興支援の啓蒙など販路回復のための系統的総合的な営業支援が重要。復興期間終了後の2021年度以降もこれらの支援を継続・拡充すること。

回答:まずは10年間しっかりやって、どんな効果が出ているかという話で、今の段階で延長するとは言えない。
天下:今からこそ力を入れていかないと、廃業や倒産になりかねない。とてもあと2年間で売上が挽回し軌道にのるとは考えられない。
曽我:水産庁として実態をどのようにつかんでいるか?
回答:水産物は農産物より販路拡大が遅れていると認識している。
 :宮古や気仙沼に行ったが、みんな心配している。そこはちゃんと調べていただきたい。
小高:事業所の現状はどうにか経営をつないでいるところ。腰を据えて経営基盤を強めることを考えていただきたい。
回答:水産加工は、被災地はもとより全国的に大変。仮に10年で終わっても、全国への政策の中で考えていくこともある。

2.塩釜の水産物や水産加工品・練り製品は、福島の原発事故による風評被害のため、関西以西での販売が落ちたままである。風評被害払拭と国内外での販売促進を支援すること。

回答:風評被害対策事業に、平成28年度は大阪・福岡で6加工業者、29年度は大阪・福岡で10加工業者、30年度は大阪で15加工業者がそれぞれ宮城から参加している。年々伸びている。また、仙台で東北の水産加工展示会を開き、関西のバイヤーも増やしている。

3.魚の消費を増やすために、魚食の普及や、「蒲鉾は高たんぱく低カロリー食品」という情報発信を支援すること。

回答:水産庁としても問題意識があり、水産基本計画にも重点的に入れている。手軽な加工品を紹介するファストフィッシュの取組では、塩釜の蒲鉾も取り上げてPRしていただいた。特に若い世代に水産物を使ってもらえるように、学校給食関係者や妊婦向け研修の中で紹介している。
天下:テレビなどでも魚食の優れているところを発信してほしい。

4.小売り段階では価格競争が激化し、消費税や原料などコストの上昇分を価格に上乗せできず、大手スーパーに買いたたかれている現状がある。被災企業に再生産可能となる具体的な支援を行うとともに、大手スーパー等に適正な取引が行われるよう指導すること。

回答:食品流通構造改善促進法の改正があり、農林水産大臣が食品等の取引状況について実態調査を行い、その結果に基づいて必要な措置を講じ、不公正な取引がある場合には公正取引委員会に通知するというしくみができた。まずはいろんな意見を聴いて流通の実態を明らかにしていく。

5.改定漁業法が可決されたが、塩釜の漁協や漁業者からは「全く説明がない」と憤りの声があがっている。何よりも漁業者及び地方の漁協への説明責任を果たし、漁業者の声を聴くこと。
宮城県が行った水産特区は、漁業者や漁協の猛反対を押し切って企業に漁業権を与え、浜に無用の対立と混乱を起こした。その会社は、国と県から4億4700万円の補助金を投入したが赤字が続いている。5年経った今、特区を使わずに地元漁協と企業が対立を乗り越えて復興の道筋をたどっている。この混乱を繰り返さないよう、漁業権について漁協及び地元漁業者の優先権を守ること。また、民主的な海洋資源管理維持のために海区漁業調整委員会の公選制は維持すること。

回答:我々としても今の説明で充分だと思っていない。説明は継続して丁寧にやっていく。漁業権は、「適切かつ有効に」活用されている限りそのまま継続できる。海区漁業調整委員は公選制をやめて知事が任命することになっているが、法律の中で、「知事は漁業者や団体、県議会の意見を聴かないといけない」という規定がある。今でも地元で調整されて選挙は行われていない。実態は同じことだ。
天下:「適切かつ有効」の基準がわからない。宮城は水産特区の知事で、1回強行突破しているので非常に心配。公選制の問題は漁業者の自治の問題。選挙をやっていないから知事の任命だというのであれば、一般の選挙で無投票の選挙区は知事が任命するようなものだ。
田井:水産特区を作ったことがどうだったかを水産庁が検証すべき。
回答:特区は県が実施主体であり、県で検証結果を出すのが本来。
田井:県の検証はなりたたない。特区は国が法律で作ったもの。根本は漁業法の目的を変えたこと。「漁業者が主体となって漁業調整を行い、漁業生産力を高め、民主化をはかる」―ここが漁業法の根幹。これを変えた。
紙 :漁業者の要望があったわけでもない。国家戦略特区ワーキンググループの議論で今回の改定になった。変えたのは外部からの圧力だ。

6.日本の沿岸養殖漁業を支えているのは小規模沿岸家族漁業であり、新規漁業就業者の確保と養成、定着のための支援を拡充すること。特に、定着のためには生計が成り立つことが重要であり、所得向上に向けた家族複合経営化など就業後の技術研修等への支援を強めること。

回答:漁業に関する知識ゼロの方・就業準備段階から定着段階まで支援している。漁業就業者フェア(就業者と漁業経営体のマッチング)、漁業学校、漁業者のもとでの長期研修を行っている。インターネットで「漁師.jp」を参考に。
天下:全国の漁業者減少の中で、鍵をにぎるのは所得。漁業で食べていけるのかどうかだ。就業後のこのしくみを国に作っていただきたい。
回答:勉強させていただきたい。

7.燃油価格の高騰に対する対策として「漁業経営セーフティーネット構築事業」により急騰時への対策は講じられているが、全体として燃油が高くなっており、下げるための手立てを打つこと。

回答:急騰対策の改定を行い改善する。急騰対策は、7中5の85%を超えた場合を前提に、これまでは「直前四半期の20%」あるいは「1年前の20%」を超えると発動していた。今後は、加えて「2年前の40%」を超えた場合も発動する。10~11月の燃油が高かったので、10~12月期分については、1月に確定の上、支払われる予定。

【中小企業庁】

8.売上が回復しない一方で、原料価格や資材運賃の高騰が経営に打撃を与えている。中小企業等グループ補助金の自己負担分の借入金返済が困難な事業者への償還猶予の延長を、関係機関に働きかけること。

回答:高度化資金の貸付主体は県の財団。貸付要項に基づいて、5年過ぎたらすぐに返済しろと一律に求めていない。償還困難の事業者から申請があった場合、事業の継続が見込まれることを踏まえて総合的に判断して返済猶予を行っている。個々の事業者の話を聞いて柔軟に対応するよう県を通じて財団に伝える。
天下:宮城県では返済猶予は年2件程度。県議会でも相談があれば柔軟に対応するとの返事はもらっているが、相談した方の中にはまだハードルが高いという声もある。国から金融機関にも柔軟に対応してほしいと伝えてほしい。既にグループ補助金を使った事業者の倒産や廃業が出てきている。それぞれが軌道に乗るまで支えてほしい。
回答:他県も含めて猶予した実績は1桁程度と承知している。ハードルが高いとご指摘いただいたが、財団にあまり相談がないと聞いている。ご相談いただければ柔軟に対応することを事業者に周知が必要と思う。

【財務省】

9.来年10月の消費税増税が施行されると、資材や運賃は全て10%でも、魚は8%で価格に転嫁できない。復興途上の水産加工業者を更に追い詰める消費税10%増税を中止すること。

回答:課税事業者は、仕入れは10%で売り上げは買い手から8%もらう。2%かぶることになるが、仕入れ税額控除(売上税額から仕入れ税額を控除して残った分を税務署に申告する)により事業者の負担はない。消費税は消費者が負担するもの。免税事業者は納税申告の義務はないが、仕入れにはかかる。売上時に本体価格に転嫁しないと自分が消費税分を負担することになるが、そこがなかなか転嫁できないというご懸念があると思う。
天下:転嫁できないのは免税事業者だけではない。本体価格に転嫁できずに、自腹を切って消費税を払っている業者もある。現場の厳しい実態がわかっていない。
回答:そこについては、5%から8%になった時に「消費税転嫁対策措置法」が制定された。買いたたき禁止の法律である。買いたたきがあれば、公正取引委員会と中小企業庁、消費者庁が一緒に立入調査をし指導する権限を与えられている。ひどい場合は、勧告や事業者氏名の公表も行う。2018年8月末時点で、転嫁拒否行為に対して、「調査着手」が10,690件、うち「指導」が4232件、勧告・事業者氏名公表が46件。また、公正取引委員会では、31年度予算で転嫁Gメン増員の予算を盛り込んでいる。転嫁拒否で困っているところは、公正取引委員会にご相談を。

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