県立がんセンターと仙台赤十字病院を統合して名取市に、県立精神医療センターと東北労災病院を合築して富谷市に、それぞれ拠点病院を作るという「4病院再編」の議論は、県と県立病院機構、日本赤十字社、労働者健康安全機構、東北大学の5者による協議で、今年度中に基本合意をめざすとしています。
ところが、4つの病院の職員・患者さん・地域住民や医療関係者、仙台市などが置き去りにされ、まだ何も決まっていないと言いながら、名取市と富谷市に候補地の名乗りをあげさせるなど、既成事実を積み上げています。こんな当事者無視の進め方は許されません。
2病院移転後の仙台市の救急医療体制への影響は?
仙台赤十字病院と東北労災病院の移転後について、宮城県は昨年12月に、「仙台市内医療機関の救急受入能力に余力が生じる」という見解を出し、これに対し仙台市は、今年3月に「県の見解に疑問がある」と文書で反論し、再度、県の見解を求めていますが、未だ回答していません。
【天下議員】
県と仙台市の論点の違いは、❶移転後も仙台市内に搬送される重篤事例件数について、県は三次救急病院で対応した重症事例数の割合をもとに案分計算しているが、仙台市は三次救急病院及び専門特化型病院に搬送された実績値を使っていること、❷県が計算に含めた塩釜地区からの搬送件数は影響が限定的であることから、仙台市は除外したことです。
仙台市の見解のほうが妥当だと考えるが、どうか。
【村井知事】
❶搬送の実態を見ると、仙台市以外の消防本部の全搬送数に占める重症は1割程度に過ぎず、大部分は新病院で受入れ可能と考えている。❷塩釜地区への影響については、現在、各種データ分析を進めているところであり、引き続き検証していく。移転後の新病院では応需率の高い二次救急医療を担うことをめざしており、再編により、仙台医療圏全体の救急受入能力の強化が図られる。
【天下議員】
しっかりと検討して、仙台市とディスカッションしていただきたい。
【村井知事】
できるだけ早く、仙台市のほうに出せるものについては、しっかりとご回答させていただきたい。その上でディスカッションすることが重要だと思う。
【天下議員】
余力が生じるかはっきりしないのであれば、一度、撤回すべきだ。
4病院再編は「急性期病床の削減ありき」
【天下議員】
これまでの議論を概括すると、名取市と富谷市に建設予定の病院は、4つの病院の現在の医療機能を継続し、新興感染症にも対応し、がんを総合的にみる医療体制の構築や、精神疾患と身体疾患合併症患者の医療を新たに開始し、更に救急医療を強化し、富谷については脳卒中センターも設置する。急性期病床を減らしてこれだけの機能が持てるのか。
【村井知事】
急性期病床を削減することは、地域医療構想の趣旨からも、安定した経営の観点からも必要だ。その規模の中でも実現できる高度な医療機能について検討している。
県はがんセンターから撤退するのか?
6月議会で、同僚議員への質問に対して知事から、「がんセンターが将来、希少がん・難治がんを今と同じような形で行うべきか、あるいは別の形を目指せばいいのか、東北大学にご指導いただきながら考えていく」という趣旨の答弁があり、保健福祉部長からは、「東北大学の機能分担や民間病院との機能分担の検討」という答弁もありました。
【天下議員】
知事はがんセンターについて、希少がんや難治がんは東北大学で、民間病院でやれることは民間でという選択肢も検討しているのか。
【村井知事】
いろんな幅を持った検討の中に、今天下議員がおっしゃったようなことも、当然、考えなければならないと考えております。
【天下議員】
県がガンセンターから手を引くようなことはしないようにと申し上げておきます。
「基本合意前には説明しようがなく、基本合意後は理解を求める」
=職員・患者・関係者の声を「聞く耳」がない知事の答弁
【天下議員】
これだけ患者さんや地域の方から不安の声が上がっているわけですから、知事は、基本合意の前に、精神医療センターの職員、患者さん、地域の連携事業者などに、きちんと説明をして意見を聞く場を設けるべきです。いかがですか。
【村井知事】
まだ基本合意も出来ないうちから何も話しようがないということ。精神医療センターとがんセンターにつきましては、当然方針が出たならば、職員に対する説明も含めて、我々がしっかりやっていきたいと思っています。
【天下議員】
知事、基本合意というのは、地域の方に説明をして、対応策が十分に出来ない場合は、もう一回引っ込めることもあるのですか、どうですか。
【村井知事】
基本合意した内容についてご理解いただけるように説明するということであります。
【天下議員】
やっぱり今の患者さんに対して責任を持ってないと言わざるを得ません。知事、医療は人権です。知事が、現在の患者さんの医療を受ける権利を無視して、4病院再編を強行することは、人権侵害に当たるのではないかと指摘します。